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確定拠出年金の受給方法 ― 一時金の場合(犬山忠宏)

2014-11-14

一時金の場合の課税関係

 前回のコラム「確定拠出年金の受給方法(年金の場合)」では、確定拠出年金を年金で受給する場合の税制上有利な受給方法について述べました。今回は一時金で受給(老齢一時金)した場合についてみてみましょう。

 確定拠出年金を一時金として受給する場合その一時金は退職所得に該当します。退職所得の金額は次の算式により計算されます。

(収入金額−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

 この算式の中の退職所得控除額は次のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

注:勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げ。

確定拠出年金の一時金として受給する老齢一時金に係る退職所得を計算する場合、勤続年数とは老齢一時金の支払の基礎となる掛金払込期間をいいます。

退職所得控除額を計算する上で注意する点

 退職所得控除額を計算する上で注意する点として、企業などに勤務していて老齢一時金とは別に退職一時金の支給を受けた場合には退職所得控除額の計算上調整が必要になるということがあります。

(1)同年中に他からも退職手当等の支給を受けている場合

 それぞれの勤続期間を計算し、最も長い期間を勤続年数として計算します。ただし、この最も長い期間と重複していない期間があるときは、この最も長い期間と重複していない期間をこの最も長い期間に加算します。

(2)前年以前14年以内に退職手当等の支給を受けている場合

 老齢一時金を受給した年よりも前に企業などから退職一時金の支給があった場合には、以前に受けた退職一時金の額がその時の退職所得控除額以上か未満かで計算方法が異なってきます。

 1.退職一時金が退職所得控除額以上の場合

 老齢一時金の勤続年数に基づき計算した退職所得控除額から、退職一時金の勤続期間と老齢一時金の勤続期間とが重複している期間を勤続年数とみなして計算した退職所得控除額を差し引いた金額が退職所得控除額となります。(重複している期間の1年未満の端数は切り捨て)

 2.退職一時金が退職所得控除額未満の場合

 退職一時金の勤続期間を、退職一時金の起算日から退職一時金について次の表により計算した期間を経過した日の前日までとみなして、老齢一時金の勤続期間との重複期間を計算し、その上で(1)と同様の計算をします。

前の退職一時金の額 退算式
800万円以下の場合 収入÷40万円
800万円超の場合 (収入金額−800万円)÷70万円+20

注:1に満たない端数を生じたときはこれを切り捨てた数

税制上有利な受給方法

 老齢一時金として受給する場合、他の退職一時金の支給があったことにより退職所得控除額の計算上掛金払込期間に基づいて計算した退職所得控除額をそのまま使用できない場合があることに注意が必要です。他の退職一時金の受給時期によっては、老齢一時金の受給時期を繰り下げることによって前年以前14年以前に退職手当等の支給がない状態にして、上記の退職所得控除額の調整計算の適用がないようにすることができます。

 また、確定拠出型年金の掛金払込期間が他の退職一時金の勤続期間内にすべて含まれており、かつ、他の退職一時金の受給額が退職所得控除額を超えている場合には、他の退職一時金を受給する年と同じ年に老齢一時金を受給すると、実質的に老齢一時金には退職所得控除額が利用できないことになります。この場合、老齢一時金の受給を翌年以降にすることで最低80万円の退職所得控除額を利用することができます。

 しかし、現実的には適用される退職所得控除額を多くすることはできなかったり、難しかったりすることが多いと思いますので、重要になってくるのは年金で受給した場合(あるいは年金と一時金の併用をした場合)と比較していずれの受給方法が有利になるかということです。比較するうえでのポイントは次の3点です。

  • (1)年金で受給した場合公的年金等控除額の範囲内、一時金で受給した場合退職所得控除額の範囲内であれば所得は発生しませんので有利です。
  • (2)年金で受給した場合公的年金等控除額を超える部分に該当する金額は75%〜100%が所得金額となるのに対し、一時金で受給した場合退職所得控除額を超える部分に該当する金額は50%が所得金額となりますので、それぞれの控除額を超える部分については一時金で受給した方が有利です。
  • (3)年金で受給した場合は他に給与所得、不動産所得、事業所得などがあるときはそれらの所得と合算した総合課税となるため、それらの所得と分離して課税される退職所得と比べて適用される税率が高くなる可能性があります。

 今後、老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられますと、60歳から64歳までは公的年金等の受給がない方が多くなってきます。この公的年金等の受給がない期間に確定拠出型年金を年金で受給することにより、年額70万円までの公的年金等控除額以下であれば税金がかからずに年金を受給することができます。そしてこれを超える部分については一時金で受給することにより税金の負担を相対的に低くすることができます。

 実際には、老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢とその受給額、確定拠出年金の想定受給総額、その他公的年金等の受給額、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額、所得控除額、他の退職一時金の受給時期と受給額、勤続期間、掛金払込期間などの条件によって、受給方法の有利判定は異なってきます。受給方法にも一定の制限がありますので、ライフプランとも合わせて十分な試算を行ったうえで確定拠出型年金の受給方法を決定されることをお勧めします。

犬山 忠宏

【いぬやま ただひろ】

1959年生まれ。神奈川県藤沢市出身。犬山忠宏税理士事務所/FPオフィスp.1代表。機械メーカーを早期退職後税理士・FPとして独立。税務だけでなく企業の経理から個人の家計管理、資産運用まで幅広くトータルなアドバイスを行っている。

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