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イールドカーブ・コントロールとは?(FPコラム)(阿部重利)

2016-10-07

イールドカーブ・コントロールとは?

 この度、日本銀行は9月20、21日の政策委員会・金融政策決定会合において、これまでの金融政策の「総括的検証」を踏まえて、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」なるものの導入を決定しました。では、この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とはいったい何のことでしょうか?

 そもそも量的・質的「緩和」なのか?見方を変えれば「緩和」ではなくいわゆる緩和の出口=「テーパリング」ではないか?という感じもしますが、ここではその議論は置いておくことにします。

 そこで、「長短金利操作」のみに焦点をあてると、これを別名「イールドカーブ・コントロール」といい、金融市場調節によって長期金利と短期金利の操作を行うことを指します。具体的には、短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用し、長期金利は10年物国債金利がゼロ%程度で推移するように長期国債の買い入れを行うというものです。

 つまり今後は、日本銀行の国債買い入れは、買い入れ額のメドを示した上で、「長短金利の操作方針を実現するように運営される」ということになります。

なぜ導入?

 イールドカーブは、縦軸を債券の利回り、横軸を債券の残存期間として、両者の関係を表す曲線のことです。すなわち、通常であればイールドカーブは、期間の短い金利が低く、期間の長い金利は高いので右肩上がりとなります。

 しかしながら、これまでの日銀による極端な金融緩和の影響で、イールドカーブがフラット化(期間の短い金利が高め、期間の長い金利が低め)したため、10年、20年、30年、40年物といった国債の利回りが下がっていました。そうすると、銀行や生損保、年金基金の資金運用などが困難になってしまうといった弊害(副作用?)が発生しており、特に大手銀行や地方銀行は日銀のマイナス金利導入後、軒並み収益圧迫要因として、この政策に対する反発も強かったと思われます。

 そこで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を導入して、イールドカーブを立たせる(スティープ化させる)というのです。

うまくコントロールできるのか?!

 極端にいえば、高い長期金利を低くするのは(これまでのように長期の国債を日銀が買えば良いのですから)、比較的簡単にできると言ってよいでしょう。しかしながら、今回のコントロールは、長期金利をある程度(マイナス圏から0%程度に)上げるというものですから、日銀が買いをストップするだけでは難しいように思います。(バンバン売るとなると年間80兆円買うというコミットとも整合しません)

 そうすると、短期金利はマイナス継続ですから、そこに預けられない他のプレーヤーが長期国債を買ってくる可能性も強く、そうなれば長期金利は再びマイナス圏に。結果として、コントロール不能になる可能性もあると思います。

副作用の副作用?

 もし日銀が「なんとかイールドカーブをコントロールするために、今後は国債の買い入れを止めて、むしろ売って行きます」などと言えば、マーケットは「これまでの政策は限界!」「日銀の敗北宣言!」と受け止め、大混乱するでしょう。よって、そんなことは到底言えるわけもなく、「今後は長期戦に構えて、国債買い入れは継続しつつ、マイナス金利も継続しつつ、さらに長期の国債利回りは上げて銀行や年金基金への配慮もします」という。個人的には、非常に難易度の高いゾーンに突入したように感じています。

 これまで、金融政策の操作対象は、基本的には「短期金利」であり、「長期金利」はマーケットが決める、と教わり、教えてきたつもりですが、その概念も捨て去らなくてはならなくなった今日。

 そこまでの「思い切った?政策」の効果が出て、物価も上昇安定、景気も上昇、金融機関の収益や年金基金の運用も好調といったWINWINの結果になることを心より願うばかりです。

 間違っても、マイナス金利の副作用を抑えるためにまた別の薬を飲んで、その副作用がでて・・「最終的に何も効かなくなる」なんてことがないように願いたいものです。

阿部 重利

【あべ しげとし】

経済産業省認定 経営革新等支援機関 ヒューマネコンサルティング株式会社
代表取締役

保有資格:
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、CFP(R)、金融知力普及協会認定金融知力インストラクタ−、DCアドバイザー、年金・退職金総合アドバイザー、心理カウンセラー、ワークライフバランスコンサルタント

金融機関での実務経験を生かし、経営顧問・コンサルティング活動の傍ら、全国各地で講演会をはじめ、年約150本の企業研修、講演会、セミナー、などを精力的にこなしている。そのパワフルでユーモア感のある語り口と説得力は各方面から好評を得ており、これまでコンサルティングや研修、講演を受けた企業人の知識やモチベーション・スキルアップに大きく貢献している。
著作に、『実践 ワーク・ライフ・ハピネス2〜成功する会社は仕事が楽しい〜』(万来舎)、『働き方が変わる!会社が変わる! 実践ワーク・ライフ・ハピネス』(万来舎)、『コモディティ投資入門』(アスペクト社)、ほか、『フィナンシャル・アドバイザー』誌(近代セールス社)、『ファイナンシャル・プラン』誌(きんざい)等多数。

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