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年金の繰下げ受給はトンチン年金とも考えられる(犬山忠宏)

2018-01-12

トンチン年金と年金の繰下げ受給

 最近、長生きリスクに対応する保険としてトンチン年金が注目されています。トンチン年金とはイタリアのロレンツォ・トンティ氏が17世紀に考案した仕組みに由来した年金保険です。死亡保障がない代わりにその原資を生きている加入者に年金として支給するというもので、長生きするほど多くの年金を受け取れるというものです。国内のいくつかの生命保険会社でもこうした年金保険が販売されています。

 一方、年金の受給額を増やす制度として年金の繰下げ受給があります。年金の繰下げ受給とは年金を65歳から受け取らずに66歳から70歳までの間で申し出た時から年金を繰下げて請求できる制度です。66歳以降1ヶ月単位で繰り下げることができ「繰下げ期間の月数×0.7%」の増額率で年金が増額されます。

 繰下げ受給によって増額される年金は一生受け取ることができ、長生きすればするほど多くの年金を受け取ることができますので年金の繰下げ受給は一種のトンチン年金とも考えられます。年金受給開始を繰り下げることでその繰下げ期間に受給しなかった年金相当額がトンチン年金の保険料に相当すると考えられます。一旦年金を受け取って同額を保険料として支払ったと考えるとわかりやすいと思います。また、繰下げ受給によって増額される年金(増額部分)がトンチン年金の保険金(年金)に相当すると考えられます。

 たとえば65歳から750,000円の老齢基礎年金を受給することができる人が70歳からの受給に繰下げをした場合、この間受給しなかった年金750,000円×5年=3,750,000円が保険料に相当します。そして繰下げ受給によって増額される年金750,000円×(0.7%×60月)=315,000円が保険金(年金)に相当します。

年金の繰下げ受給の特徴

 トンチン年金の一種とも考えられる年金の繰下げ受給ですが、次の6つの特徴があります。(注:上で述べたように年金の繰下げ受給を一種のトンチン年金と見立てた表現で記載しています。)

(1)約12年で元が取れる。

1年繰下げることで8.4%増額されるわけですから約12年で元が取れます。国内の生命保険会社のトンチン型年金よりも短期間で元が取れます。

(2)保証期間がない。

受給を開始した後に亡くなるとその時点で年金の受給は終了し、受給期間がどんなに短くても遺族に保険金等が支払われることはありません。

(3)保険料払込期間が限定されている。

保険料払込期間は繰下げ期間と考えられますので65歳から66歳以降70歳までの任意の期間(1ヶ月単位)に限定されていると言えます。

(4)保険料払込期間中に亡くなった場合保険料相当額が戻る。

繰下げ期間中(年金を請求する前)に亡くなった場合は65歳で請求していれば受け取ることができた年金をその亡くなったときまでの期間分一定の遺族に支払われますので、保険料相当額が戻ると考えられます。

(5)保険料払込期間中に解約した場合保険料相当額が戻る。

繰下げ期間中(年金を請求する前)に繰下げせずに受け取ろうと思い65歳にさかのぼって請求すればその時点までに支払われるはずであった年金を受け取ることができます。年金を請求する前であれば解約して保険料を全額戻してもらうことができると考えられます。

(6)保険料に対する保険金(年金)の割合に男女差がない。

繰下げ受給は繰下げ期間の月数によってのみ割増率が変わり、男女による差はありません。平均余命が長い女性にとって相対的に有利と言えます。

 トンチン型年金を検討する場合には年金の繰下げ受給もその特徴をよく理解したうえで一つの候補として検討してみてはいかがでしょうか。

犬山 忠宏

【いぬやま ただひろ】

1959年生まれ。神奈川県藤沢市出身。犬山忠宏税理士事務所/FPオフィスp.1代表。機械メーカーを早期退職後税理士・FPとして独立。税務だけでなく企業の経理から個人の家計管理、資産運用まで幅広くトータルなアドバイスを行っている。

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